令和5年度 こんにちは赤ちゃん訪問事業従事者研修会
令和5年10月21日に、新潟市総合保健医療センター(新潟市保健所)にて「こんにちは赤ちゃん訪問事業従事者研修会」が開催されました。今年度は新型コロナ感染症5類移行に伴い、会場にて全面対面形式で開催されました。準備・運営をされた子ども家庭課の皆様ありがとうございました。
講演では、万代メ
ディカルクリニック 株式会社ファミくるケアの茂木崇治先生から「周産期のファミリーメンタルケア」についての講演をして頂きましたので、皆様にも共有して頂きたく、概要をお伝えいたします。
1.20代―30代のメンタル不調とその背景
近年若い世代においてSNSで悩みやメンタル不調を共有できるようになり、精神疾患に対し寛容になりつつある。精神科受診のハードルが下がっており、20-30代の受診割合が増えている。主な疾患は以下のとおりである。
① 適応障害:明確なストレス因子に反応して情動面・行動面の症状が出現する。明らかなストレス因子を把握し適切に取り除くことが出来れば、その後6カ月以上持続することはない。
② うつ病:神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン)の減少が原因で発症。
投薬やストレスを取り除くことで平均3-4カ月で効果が表れる。100%治癒可能。
症状:必ず存在→a抑うつ気分、b興味や喜びの減退
5項目以上存在→a食欲の増減、b不眠過眠、c動作緩慢・イライラ、d易疲労感・意欲気力の減退、e無価値観・自責感・罪業感、f思考力・集中力低下、g希死自殺念慮・自殺企図
メンタル不調の背景として、環境的背景(職場環境・人間関係・家庭環境・被養育環境・経済状況)に加えパーソナルな背景(発達特性・パーソナリティの特徴・知的な素朴さ)が考えられる。
2.周産期のメンタルヘルスの現状
妊娠中不安や負担感を感じたことのある妊婦は全体の8割以上あり、日本人女性の産後1カ月のうつ病の有病率は14.3%である(2020,TokumituK)。また産後うつ病の50%が妊娠中に発症している(DMS-5)との報告もある。このことから全ての妊産婦に妊娠中~産後長期にわたるメンタルヘルスケアが必要と言える。
父親の産後うつについては、最近の研究では母親と同水準で見られている。2010年のイクメンブームからコロナ禍を経て2022年の「産後パパ育休」への取り組みなど、父親に求められる役割が急速に変化している。そのため、変わらない過酷な労働環境や父親のメンタル不調への無理解、支援の少なさが原因で父親が孤立している傾向にある。リスクのある妊産婦はサポートの体制があるが、父親のサポートは十分な体制が整えられていないのも父親が取り残されている原因になっている。(父親支援事業を実施している自治体はわずか6.6%)
支援のポイント
1. 対象理解→客観的な情報収集・メンタル不調に隠れたパーソナルな背景・ボンディング障害の存在・気になる違和感を見逃さない
2. 関係性・関り→拒絶されない関係づくり・頑張りを伝える・本人のモヤモヤを言語化する・本人が行動できるような見通しを伝える
3. 連携→受診を進める目安(楽しめるはずのことが楽しめない状態が2-3週間続く、「消えたい」という衝動、自然な流涙
4. 環境→いつでも頼れる環境づくり、孤立化を防ぐ体制づくり、サイレントマジョリティの声を拾う支援
5. 継続支援→切れ目ない支援、適切な場所への連携、妊娠期から父親・家族を含めた支援
次に保健所健康増進係 平野真由美先生(歯科衛生士さん)より「妊産婦の口腔ケア」についてお話を頂いた。
新潟市では母子手帳交付時に妊婦歯科健診の受診券を配布している。妊娠中に1回無料で予約制の集団健診を行っている(歯科健診と歯科保健指導)。結果は母子手帳に記載され、要治療の場合は安定期の歯科受診を推奨している。
新潟市の受診率は30.5%。未処置の虫歯有病者率は23.4%、歯周炎有病率は25.0%であった(R4)。妊娠中はつわりや女性ホルモンの影響により口腔内環境が変化し、虫歯や歯周病になりやすい。また、歯周病は全身疾患の誘因にもなるため、適切なセルフケア(フロスの利用、ヘッドの小さいもので磨く、洗口剤の利用、タフトブラシの利用など)とかかりつけ医の定期的な健診とクリーニングが重要であるとの事であった。
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